「ガスショック」と「オイルショック」という別け方をよく質問されます。
サスペンション用のショックアブソーバーには構造的に大別して
「復筒式(低圧ガス)」と「単筒式(高圧ガス)」
と2種類に別れます。 前者は主に純正ショックや社外品でも比較的安価な一般的なショックに多く
その名の通り2重のチューブになっており、その外筒の部分に低圧のガスが封入されており、ガス室とオイル室は物理的に分離されていません。(SACHS・KW・CONI)
対して後者はOHLINSやBILSTEIN、その他比較的高級なショックに使用される構造で別名ド・カルボン
式とも呼ばれます。これはその名の通り単筒式で、ガス室とオイル室が直列配置され、その分離は
フリーピストンにより物理的に分離されています。ちなみに、よくある「別タン」と呼ばれるガスタンクが分離されているものもこの単筒式のものです。
現在、自動車用のショックは構造的にはこの2種類しかなく、「オイルショック」と呼ばれている
ものでもかならずガスは入れられております。
ですので、「オイルショック」「ガスショック」と いう呼び方は私にとっては非常に気持ち悪い?のです。
ちなみにこの「高圧」「低圧」というのもとくに定義があるわけではありません。あくまで分類上のものです。
とくに単筒式のものは「高圧式」と言われますが、ガス圧力は自在に調整できますのでセッティングによって様々ですwww
ではなぜショックアブソーバーにはガスを封入する必要があるのでしょうか?
これも解ってる人には当たり前すぎることですが、ショックはロッドが伸縮することでストロークします。
たとえば、ロッドがいちばん縮んだ状態でショックケースの中にオイルを満たした場合、
そのままロッドを引き上げると、引き上げられたロッドの容積ぶん、ショックケースの内部に空間ができることになります。
この「容積変化」をカバーするために内部にガスを封入して、常に圧力をかけておくのです。
そうしないと、ストロークが伸びた際に空気が入ってショックの動きを妨げることになります。
また、もうひとつ重要なことは、内部の圧力が低下することでキャビテーション(泡立ち)が起き
てショックの性能が低下することになりますので、それを防ぐ意味で常に圧力をかけておく必要があるわけです。
ショックアブソーバーはピストンに設けられたバルブの隙間をオイルが通過するときの流動抵抗に
より減衰力を発生しますが、この抵抗で吸収されたエネルギーは熱となります。
ですので、内圧をしっかりかけておかないと、局部的にオイルが沸騰してそれが気泡となるわけ
です。ブレーキラインに発生するベーパーロックのような状態を想像していただければ わかりやすいかと思います。
単品でショックアブソーバのロッドを押すと戻ってくるのは、このガス圧によるものです。
ですので、セッティングによってガス圧が違えば当然ながら戻ってくるスピードも違ってきます。
(とくに安物はロッドのオイルシールやブッシュの精度にバラツキがあるため、この摩擦抵抗の
差が大きく、これのせいで新品時からロッドの戻りスピードに差があることが多いです、)
一般的によく言われる「ショックが抜けている」というのはこのガス圧が新品時よりも低下して きていること言います。
ガスは主に窒素ガスですのでどうしても長期的に見ると僅かずつ抜けてくるからです。
ちなみに、ガスの必要のないショックもあります。
それはオートバイのステアリングダンパーのように内部容積が変化しない構造のものです。
ステアリングダンパーは見れば一目瞭然ですが、ロッドが両側に貫通していますので、ケース内部
の容積はまったく変化することがありません。 もちろんそれでも圧力をかけるメリットはあるの
ですが、容積変化の面から言えばガス封入の必要はありません。
ここで、2つのタイプのショックアブソーバーのメリットについて簡単に比較します。
★復筒式低圧ガスショック
①部品精度がそれほど要求されないので、量産、低価格向き
②ガス室とオイル室が並列に配置されることになるので、同じストロークならば単筒式よりもショックの全長を短くできる。
③上記2のことは逆に言うと、同じ全長ならば単筒式よりもストロークを稼ぐことが容易。オイルとガス混入の為
④二重のチューブ構造なので、たとえばオフロード車で荒れた路面を走行した時など、飛び石 等で外筒が凹んだりしても潰れるのは外筒だけで内部のチューブは守られるので、こうした用途ではメリットが大きい。
★単筒式高圧ガスショック
①同じ外径ならば復筒式に比べてはるかにピストン径大きくでき、しかもオイル容量も大きくできるので、基本的なショックとしてのキャパシティが大きく、性能そのものが高くガスとオイルが混ざることがなく耐久性も高い。
②フリーピストンなどの関係でケースにかなりの精度が要求されるが、構造的には単純であり分解オーバーホールが必要とされる構造にしやすく、セッティング変更も容易。
③減衰力調整機構が持たせやすく、とくに別タンク式にすると、圧側、縮側独立しての調整機構を持たせることが構造的に容易となる。
④ガス圧を調整するのも容易。
⑤ケースが単筒なので、放熱性が高いのでハードな用途に対しての安定性が高い。
こんな感じになりますww
それぞれのメリット、デメリットはありますが、私個人的にはやはりショックとしての基本性能が高い単筒式のほうが好みです。
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